エベレスト街道を歩く

パクディン宿泊

シェルパのご主人

 1日目の宿泊地、パクディンでは、EVEREST GUEST HOUSEというロッジに泊まることになった。あたりはだんだんと薄暗くなってきていた。

宿泊するロッジ

 このロッジのご主人は、かつてはシェルパの仕事をしていたそうで、日本人と一緒に山へ行ったこともあるとのことだった。登山家の山野井泰史さんとの写真も見せていただいた。日本語も話し、顔つきも日本人と大差ないので、ついつい日本の人かと勘違いしてしまう。また、 ネパールでの挨拶の言葉は、普通は「ナマステ」だけれど、ご主人はチベットの言葉の「タシデレ」も使っていた。 

ロッジにて

 部屋の一角には仏壇があり、チベットの仏様を祭ってあった。近くの寺院の仏様をお祭りしているとのことで、水を供えたり火を点したりということが特別なものではなく、日常の一部となっている様子が印象的だった。

ロッジにて

 絨毯の敷かれた椅子に座り、紅茶を飲みながらしばらく休憩し、2階の部屋へと案内される。簡素な部屋で、窓越しに外を眺めると、山は霧に包まれているが、ロッジの下の道をトレッキング客やゾッキョが次々に歩いていく。窓から入ってくる冷気のため底冷えがする。ダウンを着て下半身だけ布団に入り、地図を見たり、ヘリコプターから見た光景を思い出したりしながら、夕食までの時間を過ごす。

ロッジの部屋より

 山間部のためか見る間に外は暗くなり、また町の明かりもあまりないので夜がとても早い。電気をつけるのがもったいなく、夕食にはまだ早いが、1階に降りてみる。入口の扉をあけると、薪のストーブのおかげで部屋全体がじんわりと温まっていた。

夕餉のひととき

 食事はいろいろ選べるが、今回の旅行でできるだけ食べようと思っていたダルバートを注文した。日本でいうところの定食、またはどこにでもある家庭料理といったもので、ネパールの一般的な料理となっているそうだ。いろいろなバリエーションがあるが、ここのロッジでは、白米、豆のスープ、豆や野菜の炒めもの、そして焼いたナンというプレートだった。質素だけれどとてもおいしい。

夕食のダルバート

 食後に紅茶をもらい、ガイドさんなどに現地の生活のことや家族のことなどを聞きながら過ごす。ネパールの大地震の影響、そして教育や医療の話。怪我や病気で働けなくなった人(悪いときには亡くなってしまうこともよくあるそうだ)やその子供の支援など、多くの人々が山間部に住むため課題も多い。フィルターのかかっていない現地の人の生の声が聞け、いろいろと考えさせられる。それにしてもガイドさんはとても流暢な日本語を話し、しかもそれが現地ネパールの日本語学校で学んだだけだと聞いてとても驚いた。けれども読み書きは難しいらしく、日本語のガイドブックを興味深く見ていた。

 いい時間になったところでお開きとなり、明日の出発時間を決めて部屋へと戻る。

パクディンの夜

 真っ暗な部屋はすっかり冷え切っていて、寝る支度を整え布団の中に首までしっかりともぐり込む。布団に入ってしまえば、それほど寒いことはなかった。遠くから、おそらくトレッキング客の話し声が聞こえてくるが、それもほどなくやみ、冷え冷えとした静かな夜が訪れる。

 ロッジの外からは、夜中や明け方にも、時折、人の歩く音が聞こえていた。